突発性難聴に朗報(3)

今回は最近の治療例を挙げて、突発性難聴の現状と問題点、これからの課題などを考えてみたいと思います。

Mさん 30代女性

5月下旬に突然、左耳の上に連続した強い痛み(刺痛)が出て脳外科を受診、異常なし。
数日後、ひどい左肩こりと左耳鳴りが出現し耳鼻科を受診、突発性難聴と診断。
ステロイド剤を服用しながら様子を見たが効果なくネットで鍼灸治療を知り電話相談あり。
その後、肩こりが激痛に変わり、数日間睡眠も取れないほどになってしまった。

6月上旬1回目の治療。その夜から熟睡できるようになった。
2回の治療で左肩の痛みは取れたが左耳のこもる感じは著変なし。
この時点で聴力検査を実施するもオージオグラムには変化なし。

さらに数回の治療を続けるうちに徐々に耳のこもり感が取れてゆくのを実感。
6月下旬、聴力検査。250dBでの聴力以外は基準内に入りほぼ完治に近い状態となる。(臨床的には完治)

この方はとても順調に完治できた例のひとつです。

問診の際、オージオグラムを見て完治が期待できるケースであると直感していましたが、予想どおりに治ってくれました。
みなこのように行けばうれしいいのですが現実はそう甘くはありません。


1年前の症例、56歳男性、0さん

1週間の海外出張から帰国後に左耳に発症。
9日間の入院治療を受けるも改善なく退院。
さらに通院しながら星状神経節ブロック注射を行うも全く効果なく、ネットでハリ治療を知り来室。

この方のオージオグラムはほとんどの音域でスケールアウト、つまり測定不能なほどの超高度難聴でした。
短期集中的に31回治療を行った結果、オージオグラムには徐々に変化が現れ測定可能値にまで回復したのですが、残念ながら聴力は戻りませんでした。

実は…、多少は戻ったのです。
ただ、戻ったのは雑音だけでした。

それまで全く聴こえなかった左耳に雑音だけが聴こえるようになり、肝心の音声が聞こえないというのはかえってイライラやストレスが増えたかもしれないと思うと、ちょっと複雑な心境です。
Oさんは治療半ばで東京に転勤になり、その後の経過は不明です。

70代前半の女性Sさん
この方は3年前の発症で、かなりの時間が経過してからの治療です。
実はSさんの治療は7年前のことで、5年くらい治療に来られていました。
特殊なケースでしたので症例として挙げることにします。

主訴は右の耳鳴りがつらいと来室されました。
日によって波が大きく、ひどい日は涙が出てくるほどで、家族から何かあったの?と聞かれることもたびたびあったそうです。
この3年間で4つの病院をまわったとのことですが、4つ目のクリニックではろくに診察もしてくれなかったどころか
「もう神経が死んでしまっているよ」とひどい言われ方をされて、落ち込んでいたそうです。

そんな時、息子さんから
「僕の友達が今年突発性難聴になって、ハリで治ったらしいからそこ行ってみたら?あきらめちゃダメだよ!」
と、電話で励まされたとのこと。

問診を進める中で、突発性難聴治療に対する病院の対応にいまさらながらやりきれなさが募ってしまいました。

あなた、運が悪かったね。一応やるだけはやってみるけどね。
みたいな言い方をされたようで…。
しかもSさんの場合は完全に突発性難聴でありながら2軒目までは歳のせいといわれ、何も治療をしてくれなかったようです。
3軒目のペインクリニックで神経ブロック(注射)を数十本受けましたが、効果は出ませんでした。
そして4軒目で神経が死んでいると宣告されてしまったのです。

「大丈夫、死んでなんかいませんよ。
だって聴力検査で75dB(デシベル)という数値が出てるじゃありませんか。
死んでたら全く聴こえませんよ。
だから希望を持って治療を受けてください。」
と励ましたものの、内心は確信が持てておりませんでした。

最初の2か月くらいは変化がなく治療をやめようかと思たそうですが、
息子さんから「3年間つらい思いをしてきたんだから、3年間治療頑張ってみたら?」
と、励まされたそうです。

3か月くらいしてから、波が小さくなってきていることに気づいて、聴こえも少し良くなってきた気がすると言い出しました。
一度病院で聴力検査を受けて数値の変化を確かめてみたら?と勧めましたが、病院にはもう行きたくないとのことでした。
ご本人の自覚症状で改善状況のチェックをしてゆくしかありませんでしたが、薄皮が少しづつ少しづつ剥げてゆくように、症状が軽くなっていきました。
Sさんは結局4年近く治療を続け、つらい耳鳴りもほとんど出なくなりました。

Sさんのように発症後3年もたって固定化してしまった突発性難聴にも効果が出たのはまれなケースではあります。
西洋医学は日々進化をしていますが、こと突発性難聴に関しては停滞してしまっている感がします。
一通りの標準治療が終わると、病院では固定化の宣言がなされますが、

最後に。
突発性難聴に限らず耳の症状でつらい生活をされている方には、あきらめないで!と言いたいです。
鍼灸を含め、東洋医学にはいろいろな切り口、手段があります。
まだ可能性はあると信じています。

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