緊急入院てんまつ記(最終回)

― 厳しくも優しい天使たち 

3日目にもなると、痛みも、息苦しさも全く消失。
寝すぎて腰が痛いくらい。
今日にでも退院したい気分。

TVもラジオも窓の景色もないので、楽しみはトイレと洗面所の往復。
ナースステーションの近くに新聞コーナーがあり、距離も大したことないからと、
ソファに腰掛け読んでいると、ナースが飛んできた。

ナース 「トイレと洗面だけという約束じゃなかったですか?
     心臓に水がたまるとやっかいだと先生が言ってました。
     油断すると長引きますよ!」

私   「スミマセン、ついヒマで…。」

ナース 「今が大切なときです。気をつけてくださいね!」
  
私   「ハイ、…。(しょぼん)」


トボトボとベッドに戻ると、さきほどのナースが読んでいた新聞を持ってきてくれた。

ナース 「ここで読んでくださいね。本当は病室持ち込み禁止だけど…。

    読み終わったら私が返しに行きますからそこ置いといてね。」

ニッコリ笑って出て行った。


この一件以来、私はCCUの要注意人物になったようで、
申し送り後のバイタルチェックでは、どのナースも口を揃えて

「いいですね、トイレと洗顔以外は安静ですよ。今が大切なときですからね。」
と、同じことを言う。

ひょっとしたら、洗面所の窓際で妻にメールしたり、
トイレついでに1階の売店に足を延ばしたりしていることも
すでにバレバレかも知れなかった。


― いよいよ退院だぁ~! ―

厳しくも優しい天使たちに世話されながら、めきめき回復。

入院4日目、チーフナースから
「だんだん良くなってきましたネェ~。
 でも、油断はしないでね。
 明日、先生から経過について話があります。
 奥様にも同席してもらいますので、私から連絡をしておきます。
 心電図も正常になってますから、きっと大丈夫ですよ。」


いよいよ当日。
医師はパソコンの画面で、私に心電図脈波の推移を映して見せてくれた。

医師  「これが入院当日。
     この波形がひっくり返っちゃってるでしょ。
     そしてこのST波、これがあがっちゃってますね。

     これが心筋梗塞や心筋炎特有の波形。
     それがこのように日ごとに改善されて、昨日がこれ。
     わかりますか?」

ふだん見てないものを分かりますか、といわれても…。
でも、ドクターの気持ちはよくわかった。

うれしかった。

医師「で、結論ですが、あさって退院としましょう。
     ナースの報告では、元気すぎて困るほどだそうですから。
     思ったより早い回復でしたね。」

私 「ありがとうございます。
   先生やみなさんのおかげです。
   ということは、心筋炎ではなかったのですね?」

医師 「心膜炎でした。が、手遅れになると心筋まで行きますよ。
    くれぐれも無理しちゃダメですよ。
    3週間後にもう一度来てください。」

妻と2人、肩を並べ病室へ、ゆっくりゆっくり歩いた。

今までの生活を見直し、こんなふうにゆったりとしたリズムで過ごそう、
そう心に決めて…。  
                             
読者の皆様、他人の入院騒動に長々とお付き合いいただき、ありがとうございました。

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